哲学なんて知らないはやくん

哲学なんて知らない学生が、哲学の話をします。

2021-01-01から1年間の記事一覧

カント倫理学は義務論だったのか

最近、「功利主義」「義務論」「徳倫理学」という規範倫理学の立場を使って、古典的立場を戦わせるような構造や、道徳的な問題を解決する思考実験によって「君は何主義かな」みたいなやり方に疑問を抱いています。そこで、現在定番となった競合する立場に古…

Allison (2020) "Kant's Conception of Freedom: A Developmental and Critical Analysis" 書評

アリソンの最新著作の見取り図を提供することを目的にちろっと書いてみました。カント研究をしている、あるいはしていこうと思っている人たちの一助にでもなれれば幸いです。タイトルには「書評」なんてかっこつけて書きましたが、評するなんてたいそうなこ…

メンデルスゾーン「道徳論の基礎における明証性」解題

メンデルスゾーンはヴォルフ学派に属する思想家であり、ベルリン啓蒙の時代を生きた当時を代表する知識人である。 今回私が抄訳したテキストは、『形而上学における明証性についての論文』(Abhandlung über die Evidenz in Metaphysischen Wissenschat) であ…

メンデルスゾーン『形而上学における明証性についての論文』抄訳(第5章「道徳論の基礎における明証性」)

道徳論の基礎における明証性 人間が試みるすべての正しい行為において、人間は暗黙のうちに次のような理性による推論をしている。 Aという特性が見出されうる場面は、Bという義務を行うことを要求する。 目の前に生じている事例はAという特性をもっている。…

義務論はカント独自のものか? ——17-18世紀のドイツ思想のコンテクストとしての義務論

カントといえば義務論、義務論といえばカント。これがいまだに倫理学の教科書の鉄板である。しかし、カントの義務倫理学は、カントがゼロから編み出した独自の思想ではない。倫理学における義務づけの思想は、18世紀ドイツにおける自然法論、とりわけグロテ…

カント倫理学研究の紹介:Denis "Kant’s conception of virtue "

デニスのこの論文はCambridge Companion to Kant and Modern Philosophy (2006) に所収されているもので、カントの徳概念について学ぶ者にとっては必読文献の一つといっても過言ではないと思っています。基本的なところが非常に明瞭に説明され、無視されがち…